恐怖の泉

実話系・怖い話「消えた女性」

私達は兄弟3人で車の修理工場を始めようと、工場用の土地を探していました。

私の住んでいる地域の郊外は、近年大規模な複合商業施設やレジャー施設の建設が盛んです。
なので町中の車修理工場より、郊外で板金や修理・車検まで幅広く手掛ける方が多くのお客が呼び込める。そう見込んだ私達は、開発が進み始めた郊外に手頃な広さの土地を見つけました。

工場も間もなく完成を迎え、お客を集客するために周辺の住宅街に自分たちの手で広告チラシのポスティング始めました。
地理的には商業用地を取り囲むように住宅用地が広がり、住宅用地を森が囲んでいるような状態です。
開発は森を切り開きながら更に進んでいますが、住宅街の外れはまだ手付かずの自然が残るような風景が広がっています。
全てが新しいのですが、取り方によっては閉鎖されているような感じもする、そんな地域でした。

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この日もポスティングをするために3人で車に乗り込み出掛けました。

午後2時、空に黒い雲が広がり雨が降り出し始め、次第に激しくなってきたため一度車を停車させました。
すると雨が降る薄暗い道を、赤い傘を差した細身の女性が歩いているのが見えました。

傘が邪魔をして女性の顔は見えませんでしたが、20代前半の女性のようでした。
私達兄弟は、その女性の姿が見えなくなるまで無言の状態で彼女を見ていました。

特に理由があった訳ではありません。
しかし、何故か無言でその女性を見つめていたのです。
女性の姿が見えなくなった後、1番下の弟が
「何か感じなかった…?」
と呟きました。
2番目の弟も私も、確かに言葉には出来ないゾクッとするものを感じていました。
見てはいけないものを見てしまったような、イヤな予感が漂っていました。

数日後、修理工場が完成しオープンの日を迎えました。
すると募集も掛けていないのに若い女性が
「事務員として雇って頂けないでしょうか。」
と修理工場に突然現れました。

その女性は身長160㎝位の線の細い女性でした。
見た感じ真面目そうでしたが、化粧気のない青白い顔が、悪い言い方ですがちょっと気持ち悪い感じがしました。
私は兄弟達に相談もすることなく、その場で断ってしまいました。

すると数日後、またその女性が現れました。
工場には一番下の弟しかいない日でしたので、判断をしかねた弟は
「明日もう1度来てみてください。」
と答えてしまったのです。
すると翌日女性が姿を現しました。

兄弟で相談した結果、事務員が欲しいと思い始めていましたので
「明日から来てください。」
と返答し、女性を雇うことになりました。

女性は口数こそ少ないものの、客対応は丁寧で完璧です。
数日するうちに「いい人が来てくれたよね。」と、私達は喜んでいました。

ある日、昼間は青空が広がる気持ちのいい天気だったのに夕方から激しい雨が降り出しました。

「雨が降ってきたから送るよ。」
こんな雨の中を歩いて帰ろうとしている女性が気の毒に思った私は、車で送ることにしました。
女性をナビ代わりに道を進み、方角的に駅へ向かうのかと思いきや女性は
「ここで大丈夫です。」
と、以前私達が赤い傘を差して歩いている女性を見た場所で車を降りました。
そんなことはもうすっかり記憶から消えていた私は
「こんなところでいいの?」
と聞きました。周りは何もない森です。
しかし女性は「ハイ…。」と頭を下げて車を降りていきました。

夕食を食べながら弟たちに、女性を送ったその話をしました。
すると2番目の弟があの雨の日のことを思い出しました。
「ひょっとしたらあの女性、あの日見た幽霊だったのかもね。」
そんな冗談を言いながらも、私は変な胸騒ぎを感じていました。

次の日から女性は修理工場に姿を見せなくなってしまいました。
彼女の履歴書にある電話番号に電話を掛けてみるも、「この電話番号は…」という音声が流れてきます。
履歴書の住所の場所にも行ってみましたが、家らしい建物は存在していませんでした。
私達兄弟は3人でお互いの顔を見合っていました。
こんな事があるものかと。
彼女のことを捜す術もなく、時は過ぎていきました。

そしてある日、用事で隣町に出掛けようと車を走らせている時でした。
赤い傘の女性を見掛けた辺りに数台の車が止まっていました。

聞いてみると、その付近で白骨化した遺体が見つかったらしいのです。
白骨の近くには傘らしきものも一緒に埋まっていたのだとか。

そしてどうやら、この一帯の地主だった人の娘さんが開発当時から行方不明になっており、見つかった遺体がその女性だと判明したようです。
事件なのか事故なのか…なぜ私達の所へ現れたのか…何か伝えたかったのだろうか。私にはわかりません。
娘さんがいなくなったのは今から50年も前のことだそうです。

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